川谷医院

福岡市中央区にある精神科クリニック川谷医院の医師と心理士によるリレーエッセイです。 …

川谷医院

福岡市中央区にある精神科クリニック川谷医院の医師と心理士によるリレーエッセイです。 https://kawatani.jp/

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第1走者 川谷大治「川谷医院HPのリレーエッセイ」

令和6年2月、川谷医院のホームページ(HP)ではスタッフによるリレーエッセイを始めました。エッセイの内容は私たちが日頃臨床の合間に思い巡らせていることなどです。リレーを担当する人は川谷医院で臨床に当たっているスタッフです。第1走者は発起人の川谷が務めます。 「思い込み」について 私たちの悩みの大半は思い込みと言われます。大辞林によると、「思い込み」とは 1.そうだとばかり信じ切っていること、 2.それ以外にはないと固く心に決めていること、 とあります。 「思い込み」はある考

    • 第18走者 岩永洋一:期待について

       皆さんこんにちは。引き続き三番打者の岩永です(というか、もはや順番はなくなってきておりますが)。前回もそうですが、「三番打者」とか野球ネタをエッセイに入れ込んでいますが、私は全く野球できません。キャッチボールでも、グローブをつけてない右手が反射的にボールを取りに行こうとしてしまいます(笑)。 そんなことはともあれ、今年のソフトバンクホークスは強いですね。常勝軍団と言われながらも、ここ数年は優勝から遠ざかっていました。前藤本監督やメンバーへの期待はさぞ重たいもので、のびのびと

      • 第17走者 杉本 流:文豪ストレイドックスの精神分析

        川谷先生のバトンが「もののあはれ」だったのでそれに関連した作品です。前走(12走)で書いた「ギャップ」について触れたかった作品でもあります。 私がエッセイ用の作品を選ぶきっかけは、来院している人達から紹介されたり勧められたりするものがほとんどです。今回は古本屋に寄った際に1巻2巻を見つけ「この間の子が好きだって言ってたな」と思い出し、購入して読んで書きました。なので、2巻まで読んだだけの知識で作成しています。 ・文豪ストレイドックス(以下、文スト)(漫画/アニメ;

        • 第16走者 川谷大治:『注意と非注意のあいだに』

           恒吉先生のバトンを受けて。  恒吉先生は面接を終え、「面接室から階段を降りて医院のドアを開けると、ほんの一瞬、別世界に入り込んだような妙な感覚にとらわれることがあります」と述べて、その感覚を離人感と呼んでいます。そして、「映画館の内と外、面接室の内と外にはこころを整えるためのスキマが必要なのかもしれません」と結んでいます。 確かに、そうです。映画も面接(セラピー)も終わりがあります。私の子どもの頃の思い出ですが、楽しかった遊びも夕方には終わりが来て、子どもたちは各々家に帰り

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        第1走者 川谷大治「川谷医院HPのリレーエッセイ」

          第15走者 恒吉徹三:面接と映画と離人感

           初めまして。3をキーワードに、産後の養育者への「3つの寄り添い」のことや子どもたちのみている世界についても語ってくださったドクター渡邉から、三男坊でもないのに名前に三がつくわたしがバトンを受け取りました。 ところで川谷医院は福岡市天神からすると南の方角にあります。近くにはナッツバターの量り売りの店や、すぐそばの路地を入っていくと入り口を見落としてしまいそうなベーグルサンドが人気の店などもあって、観光客の姿を見かけることもあります。そんな街中にある医院でのカウンセリング(面

          第15走者 恒吉徹三:面接と映画と離人感

          第14走者 渡邉恵里:3の寄り添いと3から始まる世界

          今、8月からの放課後等デイサービス立ち上げ準備で慌ただしいので、 「しばらくリレーエッセイはお休みします」と言っていたのですが、 岩永先生のエッセイを読むと、どうしても書きたくなってしまい、 バトンを受け取りました。 「3」という数字で私の頭にまず浮かんだことは、「3の法則」です。 小児科で勤務していた時、 「このお母さん、産後うつじゃないかな」「虐待にならないかな」 という予感がした場合に外来で母子をみていくタイミングとして、 まずは3日後(最大5日以内)のフォローを入

          第14走者 渡邉恵里:3の寄り添いと3から始まる世界

          第13走者 岩永洋一「1/3の純情な感情」

           「壊れるほど愛しても1/3も伝わらない   純情な感情は空回り   I Love Youさえ言えないでいる My Heart」 皆さんこんにちは、打順3番の岩永です。リレーエッセイも3周目に入りました。そのことを考えながらぼーっとしていたらこの曲が頭の中に流れてきました。多分「3」周目と「3」分の1が繋がったのでしょう。この曲は1990年代から2000年代に活動していたロックバンドSIAM SHADEの「1/3の純情な感情」の歌詞の一部です。この曲、その後も多くのアーテ

          第13走者 岩永洋一「1/3の純情な感情」

          第12走者 杉本流「薬屋のひとりごとと葬送のフリーレンの精神分析」

          リレーエッセイは12月頃に「来年1月から始めよう」と川谷先生から提案されたと記憶しています。動機は川谷先生の前回テーマ「やりたいことがわからない」と同じでした。両者忘れていたので開始は2月にずれ込みましたが。私はサブカルチャー系の話しか能動的に書けないですよ、と伝えていましたので今回も同様の手法でさせていただきます。 さて、「退屈」についてバトンを頂いたので、関連した内容で。川谷先生はコナトゥス(意思・衝動・欲望)の枯渇が退屈を引き起こすと書かれていました。コナトゥスの回

          第12走者 杉本流「薬屋のひとりごとと葬送のフリーレンの精神分析」

          第11走者川谷大治「人生は退屈しのぎ」

          前回からの続きです。  前回の隠れた主題は「人生は退屈しのぎ」という重大な問いです。生物は食べることが生活の中心ですが、幸か不幸か、米と小麦を手に入れた私たち人間は食事に時間をそれほどかけなくて済みます。おにぎり1個200カロリーで1時間のウォーキングができるのです。カロリー的には1日に5、6個で生きていけます。しかも短時間でそのエネルギーを摂取できるのです。米や小麦ほど効率のいい食べ物はありません。牛の場合、1日中口を動かしていないと生命を維持できません。朝から夕まで草を

          第11走者川谷大治「人生は退屈しのぎ」

          第10走者 川谷大治「やりたいことが分からない」

          「やりたいことが分からない」  柴田先生が中動態の話をされましたので、私は能動と受動の話へと繋ぎたいと思います。ある患者さんが診察時に現在の心的状況を次のように描写しました。 やりたいことが分からない。そもそもできることが少ないので、どうしようと考えてしまいます。 私もそうです。私は令和5年10月から診療時間を少なくして水曜日は日曜日以外にも全日休むことにしました。最初の日は遅く起きて新聞を読んでゆっくりしていました。 でもその後何もすることがなかったのでウトウトと寝てしま

          第10走者 川谷大治「やりたいことが分からない」

          第9走者 柴田俊祐「エッセイを書く気が起きないことについて(中動態について、あれこれ考えてみる) 」

           リレー・エッセイを書くのをサボっておりました心理士の柴田です。普段は、川谷医院で心理療法(セラピー)をしたり、心理検査などをしています。岩永先生のエッセイは、皿うどんの話から始まって、多様性の話へ、そしてビオンの集団理論へと展開していって、なかなか面白かったですね。ちなみに、私は皿うどんにソースはかけません。  さて、リレー・エッセイの順番が私に回ってきましたが、私はなかなか書けませんでした。エッセイを頼まれてから、1週間、2週間と過ぎて、様々な先生に、「エッセイ、もうで

          第9走者 柴田俊祐「エッセイを書く気が起きないことについて(中動態について、あれこれ考えてみる) 」

          第8走者 岩永洋一「皿うどん、何かける?」

           10年程前のことになります。当時私は東京に住んでおりました。昼食を友人と取ることになり、見つけた九州料理のお店に入りました。私の目に留まったのは皿うどんでした。私は迷わず皿うどんを注文し料理の到着を待ちます。しかし、待ちに待った皿うどんにはソースが付いていなかったのです。私は店員さんにソースをお願いしたのですが、店員さんは怪訝そうな顔をしていました。私は皿うどんにソースがついてこないこと、店員さんが私の言うことを分かっていないらしいことに腹を立てていました。  皿うどんにソ

          第8走者 岩永洋一「皿うどん、何かける?」

          第7走者 杉本流「インサイドヘッドとドラえもんの精神分析」

          川谷先生の「スピノザ・感情の模倣」から連想したものです。みなさんは下記の映画を御存知でしょうか?ディズニーアニメの中でも異色の作品だと思います。 ・インサイドヘッド(ディズニー映画;2015年・アニメ) ある女の子の「頭の中の5つの人格」(感情:ヨロコビ・カナシミ・イカリ・ムカムカ・ビビリ)を主人公としたお話ですが、記憶の成り立ち(記憶は感情によって書き換えられる)、無意識(幼児期の空想の仕組みや、二度と上がってこれない谷の底)、夢の仕組み(日常残渣と潜在意識)など精神医

          第7走者 杉本流「インサイドヘッドとドラえもんの精神分析」

          第6走者 川谷大治「人はなぜ褒められると嬉しいのか」

          柴田先生の代走です。 稲員先生がベイトソンの話に触れましたので、その話からはじめます。話は今から数十年前に遡ります。統合失調症の病因の一つにベイトソンの「二重拘束」理論が注目されました。母親が子どもに対して二重のメッセージを同時に送ると統合失調症の原因になるという仮説です。当時は有力な仮説の一つでした。詳しく言いますと、二重拘束理論とは、母親が子どもに言語的メッセージと同時にそれと矛盾する非言語的メッセージを送ると、子どもは葛藤状況に陥り、それが日常的に続けられると、統合失

          第6走者 川谷大治「人はなぜ褒められると嬉しいのか」

          第5走者 稲員修平「コミュニケーションにおける、メタ・メッセージの重要性」

          第五走者の稲員(いなかず)です。川谷医院で公認心理師・臨床心理士として働いています。これまでの先生たちの話とつながる部分とつながらない部分の両方があるかもしれませんが、私が最近関心を持っていることについてまとめてみたいと思います。 グレゴリー・ベイトソンという文化人類学で有名な先生がいました。1904 年 7 月にイギリスで生まれて、第二次世界大戦中にアメリカに渡り、1980 年7月に亡くなっています。詳しい経歴はウィキペディアで調べてもらうとおおまかに分かると思います。この

          第5走者 稲員修平「コミュニケーションにおける、メタ・メッセージの重要性」

          第4走者 渡邉恵里「モモから学ぶ『寄り添い方』」

          第四走者の豆まきをしなくてもよい渡邉です。(これを読んで「?」の方は、第三走者の岩永先生のエッセイをご覧下さい) 岩永先生のエッセイに、子どもは「鬼は外、福は内」から心の成長と共に、「鬼は内、福は内」と言えるようになる、という話が書かれていました。 このエッセイを読んで連想したことは、最近はSNSでつぶやいたことが大勢の人に発信されてしまうため、「鬼は外」と思いがけないほど大量の豆をぶつけてしまうことも、ぶつけられてしまうことも多いということです。 以前はお茶の間でニュー

          第4走者 渡邉恵里「モモから学ぶ『寄り添い方』」